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共生

金沢21世紀美術館で観た企画展「積層する時間:この世界を描くこと」の中で、衝撃を受けたコーナーが二つあった。


一つは、サム・フォールズの展示。


(展示は「変化」「永遠回帰」「犠牲」「エル・キャピタン」「レオ・キャリオ」「ポリナス」の6つから成る。)


視覚的に何かを好きになる時って、私の中ではやっぱり「美しいか美しくないか」というのがあり、それは人によって何が美しいかという事になるけれども…

彼の作品はまず色合いがとても綺麗で、次にどういう手法で描いているのだろうかと不思議に思った。

自然や環境との共生をテーマに作品を創り続けているようで、手法としては、キャンバスの上に植物を配置し、特殊な顔料をふりかけた上で、何週間(時には何カ月)にもわたって屋外に放置するというもの。

太陽の光・雨・風といった自然の力をかりて、環境と共生しながら、時間を感じる表現となる…そのプロセスも美しいなと感じた。


写真1枚目の作品名は「永遠回帰」で、フォールズ自身や息子をモデルとしており、シダ植物の形状によって人間の骨格などを表現しているのが印象的だった。

解説によると「いずれ誰にでも訪れる死について考えさせられるもの」だという。


ご参考:



もう一つ好きだと思った展示は、淺井祐介さんの「大地の譜面 足音の音楽/今ここで土になる」


能登半島を中心に石川県内の土を採取して作り上げられた80色以上の土の絵の具の中には、地震の時に閉まってしまった炭屋さんの炭や、銭湯や古民家の囲炉裏の煤も含まれているそうだ。

帰ってきたからみたyou tube動画の中で淺井さんは「自然そのものの色と人の生活が作り出している色」と言っていた。


この作品は100名以上のボランティアとともに創られたという事で、高さ4メートル×長さ27メートルにもなる巨大な壁画だ。27メートルっていったら、弓道の立ち位置から的までの距離(28m)に近いな...と思うと、大変な時間と労力がかかっただろうと想像する。


個展を経験したことのある自分の中では、作品を創るときのやりがいや楽しさは、誰かと共に時間を共有するという点が大きく、それはほんとうにかけがえのない時間だ。

淺井さんの作品のように、同じ現場で文字通り一緒の時間を共有するというだけでなく、自分のイマジネーションを誰かに伝えて、それに対してその人のイマジネーションが乗っかってまた自分に返ってくるという形での「時間の共有」も、私がこれからも大事にしたい事の一つだ。


この「大地の譜面 足音の音楽/今ここで土になる」は、なんだかワクワクするような絵だった。

…みんなの中でどんな音楽が鳴っていたんだろうか。



沢山の外国人観光客とすれ違う金沢という街で、2つの作品に出逢い「共生」というテーマについて考えさせられた1日となった。


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